事業内容

核酸医薬品への応用

2020年9月、ミセル化ナノ粒子を核酸デリバリーのキャリアに応用するなど、核酸医薬品の実用化に向け研究を推進するアキュルナ株式会社を統合しました。
これにより、ナノキャリアは、これまで開発を推進してきた低分子抗がん剤に続く、新しい価値に基づく核酸医薬品に関するパイプラインを獲得しました。

核酸医薬品

低分子医薬や抗体医薬では標的にできなかった細胞内分子に対して特異性高く作用することを特徴とした、核酸を用いた医薬品です。

がんや遺伝性疾患に対する革新的な治療薬になると期待されていますが、血中安定性が課題とされています。アキュルナのDDS技術により、生体内での安定性を向上し、核酸医薬品の有効性を高めることができ、患者さんに負担の少ない治療を実現することが期待できます。

 核酸医薬品は、核酸を用いた医薬品の総称であり、化学合成で作られる「オリゴ核酸医薬」と転写で作られる「mRNA医薬」の2つに大きく分けられます。狭義には前者のみを指すこともありますが、本稿ではこれらをまとめて「核酸医薬」として説明します。核酸医薬の最大の特徴として、低分子医薬や抗体医薬では標的にできなかった細胞内分子を広く標的とすることができるという点があります。また、標的に対して特異性高く作用することから有効性と安全性に優れており、がんや遺伝性疾患に対する革新的な治療薬を目指して、様々な研究開発が世界中で進められています。

核酸医薬品の現状と将来展望

 2013年までに日米欧で承認された核酸医薬はわずか3品目に過ぎませんでしたが、2016年からの5年間で新たに9品目が承認され、開発段階にある品目も100以上となり、大きな注目を集めています。そのきっかけとなったのが、2016年に上市されたIONIS社が開発した脊髄性筋萎縮症治療薬スピンラザの成功です。進行性の遺伝性神経難病で通常2歳程度までしか生きられない患者の症状が年間2回の投与で大きく改善したため、大きなインパクトがありました。

 核酸医薬開発の進歩に大きく貢献したのは、まずは核酸修飾の技術でした。通常、核酸は体内に投与すると直ちに核酸分解酵素によって分解されてしまいます。種々の化学修飾により酵素に対する抵抗性を付与することが可能になり、核酸を医薬品として用いることが可能となりました。次に問題となるのが、「いかに患部まで届け、細胞内に送達するか」という課題です。これを克服するのが「デリバリー技術(DDS)」です。

uPIC (Unit Polyion Complex)技術はsiRNAやASOを腫瘍部位に届けることができるという点で、極めて優れたデリバリー技術です。また、血中安定性の悪いmRNA医薬を分解酵素から保護し、高効率で持続性の高いタンパク質発現を可能にします。

市場性(疾患/マーケット)

 核酸医薬の市場規模は2015年までは極めて小さいものでしたが、2016年のスピンラザの登場により一気に拡大し、2019年で承認済み8品目の総計で年率19%の増加で2025年にピーク時7000億円を超えると予測されています(シード・プランニング調べ)。また、現在フェーズIIIにある核酸医薬は、現在主流の遺伝性稀少疾患のみならず、循環器疾患といったより市場の大きな領域で開発されているものも多く、成功率を勘案すると市場規模は2025年で10品目5200億円と予測されています。さらに現在フェーズIからフェーズIIにあるものを換算すると2030年にはさらに増加が予測され、世界市場規模は総計で2兆円を超えると考えられています。このように核酸医薬は、低分子医薬、抗体医薬に続く第三の創薬モダリティとしての位置を確立しつつあると言っても良い状況にあります。

代表的な核酸医薬品

核酸医薬品を分類すると以下の通りになります。

アンチセンスオリゴ(ASO)

一本鎖DNAまたはRNAからなり、細胞内で相補的な標的RNAに結合し、そのタンパク質への翻訳を阻害します。また、遺伝子のスプライシング部位に結合し、スプライシングを制御することで機能するものもあります。

siRNA

二本鎖RNAからなり、細胞内で標的mRNAを特異的に切断し、その遺伝子発現を阻害します。

アプタマー

一本鎖のDNAまたはRNAからなり、塩基配列に依存した3次元構造によりタンパク質をはじめとした生体高分子に特異的に結合し、その機能を阻害します。

デコイ

二本鎖DNAからなり、細胞内で転写因子と結合してその転写因子によって制御されている遺伝子の発現を阻害します。

mRNA

タンパク質に翻訳され得る塩基配列情報と構造を持ったRNAを人工的に転写合成し、細胞内に送達することで、目的のタンパク質を作らせます。COVID-19などの感染症ワクチンやがんワクチンへも応用が試みられています。

siRNA、ASO、mRNAを用いた核酸DDS製剤の研究を推進しています。乳がんや膠芽腫など、核酸を用いた治療でこれまでにないイノベーションを推進し、患者さんに負担の少ない治療を早期に届けることを目指しています。